「江波由耶が怖がった話」抜粋

原案 : 加賀屋史生 / シナリオ : 岡部雅子

宗克「誠日! あ、いや、陰陽生のみんな、着いたんだね」
誠日「兄貴! あ、いえ、おはようございます」
由耶「お久しぶりです、宗克様。江波由耶、土御門誠日、斗賀野蓮三名到着しました。今日はよろしくお願いします」
誠日「よろしくお願いします。 ……蓮、挨拶」
蓮「誠日の兄ちゃんだー!」
由耶「いいから、挨拶」
蓮「いた、いたたた。頭押さえるなよ! ……よろしくお願いします」
宗克「(笑って)まだそんな堅苦しい挨拶はいいよ。みんな、久しぶりだね。……ええと、元気、そうだね?」
由耶「はい」
宗克「そうか、それはよかった」
由耶「はい。では我々はまずどうしたらよろしいでしょうか」
宗克「やだなあ、だからそんな堅苦しくなくていいんだよ。ええと、蓮は今日が研修初めてなんだってね」
蓮「は、はい!」
宗克「今日は、新宅礼(しんたくのれい)だよ。聞いているね」
由耶「この出来たばかりのビルの引っ越しの儀式だと歩人先生から聞いています」
宗克「引っ越しといっても、施工主が引っ越してくる、といった体の儀式だね。さすがにこれだけ大きいビルだとオフィスやテナントが引っ越してくるだけで、何日もかかってしまうから」
誠日「確かにそうですね」
宗克「いや、だからそんなに堅苦しくなくていいんだよ」
誠日「……でも、研修中ですから……」
宗克「そ、そうか、そうだよね」
蓮「なー俺たちはどうしたらいいんだ?」
由耶「おい」
宗克「ああ、由耶は僕の仕事を手伝ってくれるかい? 君はもうできるよね?」
由耶「はい」
宗克「誠日と蓮は、その前の準備を。参加する方々を清めるだけだから、簡単だからね」
誠日「はい!」
蓮「はい」
由耶「蓮もですか? 誠日はともかく……」
蓮「おれ、出来る!」
宗克「ああ、大丈夫。誠日のお手伝いをしてくれたらそれでいいよ」
由耶「……宗克様、それで、俺たちはどこに行けばいいでしょうか」
宗克「え、もう行くのかい?」
由耶「え? ええ。祭壇も見ておきたいですし……」
宗克「由耶ってそんなに真面目だった?」
由耶「な、何か問題でも……?」
宗克「いや、ないけど……ええと、祭事は最上階の一室だ。陰陽寮の事務担当も来ているからすぐ判ると思うよ。エレベーターは一基だけ動かしてもらっている。それに乗っていけばいいよ」
由耶「はい、ありがとうございます。ほら、いくぞ」
誠日「失礼します!」
蓮「失礼します!」

   SE 足音去る

宗克「ああ……行ってしまった……もうちょっと話してくれたって……」